免疫過程としての睡眠
睡眠が生体防御に役立つという古くからの考えが、免疫科学の面から新しく見直されています。
つまり、睡眠は免疫増強過程である、という新説です。
アメリカの生理学者ジェームス・クリュガー博士は、長年にわたって「S」という睡眠物質を探してきました。
そして、ようやく1984年にその本体を突き止めました。
予想に反して、その物質は免疫増強物質であり、同時に発熱物質でもあるムラミルペプチドでした。
ムラミルペプチドは、細菌の細胞壁を構成する物質です。
こんな異物が、深いノンレム睡眠を誘発するという奇怪な事実から、話が急展開を遂げてきたものです。
それによると、覚醒時に腸内細菌や食物から取り込まれたムラミルペプチドが体内でふえると、これが一種のビタミンとしてはたらいて、深いノンレム睡眠を誘発する物質をいくつも体内に放出させるのです。
それらの物質が脳に作用した結果、深い眠りがひきおこされ、覚醒中に低下した生体防御機能が回復することになります。
それゆえ、細菌感染で発熱をおこしたようなばあいにも、ノンレム睡眠がおこりやすくなり、結果として健康回復を促進するわけです。
この説にはまだいくつかの間題は残されているにせよ、睡眠の役割が新しい発想で説明されています。
ムラミルペプチドにかぎらず、最近さまざまな睡眠物質をめぐって研究がめざましく進展しているので、睡眠機構を解く新しい手がかりが得られるのではないかという期待が高まってきました。